アートの底力にインスパイアされ、往年の二枚目俳優を偲ぶ

昨日は、妻と一緒に豊かなアートの時間を過ごしました。普段は出不精でインドアの教科書みたいな私ですが、翌日(つまり今日)が彼女の誕生日だったこともあり、ここでデートの誘いを断るのは家族の平安を乱す非戦略的な意思決定だと判断したのです。昼前から、KLで最も栄えているエリアの一つ、Bukit Bintangのおしゃれビルへ、大規模な個展を見に行きました。学者・起業家としても大いに触発される、とてもよいアート体験でした。

この個展は、葉逢儀(Yap Hong Ngee)老師、つまり、1つ前のblogで私が書いた、中国正月の際に葉/林さん宅に招かれた際に昔話に興じた、うちの次男の同級生のお爺さんですね。この個展に行くことは、その際に約束していたので、ぜひとも私の日本出張の前に行きたかったのです。

個展のタイトルは、「永恒的愛」。つまりは「Eternal Love」。だが、甘ったるい感傷的な作品を予想していた私の予想は見事に裏切られました!

プロの芸術家の鋭い観察眼と旺盛な創造力に圧倒される、とても稀有な時間でした。何より、アーティストご本人が降臨し、自らの作品を解説してくれるというこれ以上ない贅沢な個展の廻り方です!

作品のほぼ全てに「バラ」が登場しており、そこに「永恒的愛」のテーマが込められているとのこと。ただし、各作品が鑑賞者に与える影響は全く異なり多様なのです。

ちなみに、写真撮影もまったく自由で、来られた皆さんもパシャパシャやってました。もう一つ驚いたのは、ほぼ全ての作品に値札が付いており、即売会も兼ねてる!中華系マレーシア人の現実主義みたいなものを感じて興味深かったです。

さすがは、マレーシアの華人コミュニティーで知らぬ人はいないと言われる方です。プロだけあって、「作品の力」と呼べばいいのかな…が物凄かったですね!とにかく、溢れんばかりの創作意欲で産出される作品群は数も多い(なんと広いフロア1面全て貸切って彼の絵画だけ展示!)し、何より驚いたのは、「作風」のバラエティーが、とんでもなく幅広い!「同じ人が描いたのか、これ?」と訝しむレベル。「まだまだ倉庫に眠ってるのがあってね、もったいないねぇ~」と笑っておられたけど。マジでもったいないわ!

例えば、狩野派の金屏風な日本画を彷彿とさせる迫力ある横長の油絵があるかと思ったら、モネの「睡蓮」を思い出させる印象派っぽい光の束が透いて見える作品が。しかしその隣には、私が大好きな抽象派の巨匠、カンディンスキーの色遣いを思い浮かべる、鮮やかに躍動する色の配置が目に入ってくる。

老師は、少し喋ればすぐに分かりますが、とても博識で思索の深い教養人で、油彩・水彩・水墨画だけでなく、建築も深く学び、華道や茶道も嗜み、文学を愛し、何よりも、異文化での豊かな体験をしっかりと血肉にされています。そうした広い教養が自然と滲み出ての、この「引き出しの多さ」なのだろうな、と私は分析しました。モチーフの選択も(同じバラでありつつも)多彩でセンスの良さが窺える切り口で、ただただ感心させられました。

そして、おしゃべり好きな老師は、もちろんアートの話だけで終わりません。彼が日本で多く行った個展の話からよい感じで逸れた先には、印象的な交遊録が展開されるパターンです。今回のクライマックスは「岡田英次」さんという、往年の名俳優との交友でした。

その名前が出たとき、すぐにphoneで調べてお顔をチェックしたのですが、「太陽にほえろ」の再放送で見たことのある渋いおっちゃんやな、という程度の認識でした。でも、後で改めて調べると、えらい有名な二枚目俳優さんだったんですね!驚きました。(Wikiはこちら

岡田さんの実家にはよく泊りに行ったらしく、「お母さんには本当によくしてもらったよ」と懐かしく語っておられました。一度、新宿の紀伊国屋ギャラリーで老師が個展を開いた際に、岡田さんがふらっと「よっ、調子どう?」とやって来たらしく、現場は大混乱!当たり前やがな!エライ騒ぎになったよ…と大笑いしていました。

この逸話を私の父に話したら、自分も好きな俳優さんだったと驚いた後に、「あの映画の看板スターに、マレーシア人の仲良しがいてよく時間を過ごしていたなんて、不思議な気がする」と感慨深げ。って言うか、それを息子から聞かされるのがもっと不思議やと思うで。

岡田さんの演技のどこかに、この異国の芸術家の友人の影響があったりするのでしょうか?機会があれば、代表作をいくつか見てみたいと思います。

相変わらず大変茶目っ気のある今年80歳になるお爺ちゃん。また会いに行きたいですね。

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