Loss of Chinese Presence in the Middle East|中東における中国プレゼンスの失墜

https://www.thinkchina.sg/israel-hamas-war-testing-credibility-chinas-middle-east-strategy

なかなか分かりやすくかつ 鋭い分析ですね。国立シンガポール大学の分析家の意見です。中近東 において、中国がその影響力を失っていることが露見しているという話ですね。中国の「中立主義」のマイナス面ともいえる。

この記事が指摘するように、イラクでもアフガニスタンでも、とんでもなく浪費かつ疲労した米国は、その辺りから中東とちょっと距離を置くようになりました。その隙間を塗って大きく攻め行ってきたのが、その当時 経済的にどんどん外国に打って出ていた中国です。多くの社会インフラを、安価もしくは無料で作ってくれる中国に対して、中東諸国は大喜びしました。

しかし、これは 華僑をはじめ 中国エリートの強みでもあり弱みでもあるんですが、 徹底的に「経済第一主義」、「商業第一主義」なんですよね。それは、何もガツガツしているという意味だけではなく、自分が出張っていく外国のローカル環境に長い歴史的または宗教的な葛藤がある場合も、”経済が全てを解決する”と考えがちなパワー思考のことです。

もちろん、経済的な側面ももちろんインパクトが強いので、うまくいくところでは上手に影響力を行使してきました。乱暴に言えば、この2000年間は基本的にそうですよね。要するに、ちょっとやそっとじゃ変わらない、中華な思考スタイルなんです。

そしてこのスタイルは、近現代史以降に極めて複雑な「非経済的」な葛藤のただ中にある中東を理解するには、あまりにおこちゃま思考と言わざるを得ない。静的に保たれる「中立」は、日和見主義に見えるためインパクトがないのです。

それがモロに出たのが、今回のハマス・イスラエル 戦争ではないでしょうか。もちろん北京外交も動いてますけど、何の有効打も繰り出せていません。やはり、アメリカ合衆国の方がはるかにプレゼンスが強い。

ただ、これも本記事が指摘していますが、だからと言って 合衆国がその代わりを務めるほど大きな役割を担うには至らないということです。中東のゴタゴタで国内政治にひびが入るほど大変な思いをこの20年間してきているので、距離を置いてますよね。USは明確にイスラエル支援ですので、単純な「日和見」ではないですが、かといって積極的な交渉に動いている訳ではない。

それで困るのが EU諸国なんですけど、 はっきり言って今日の状況を作ったのが、フランスやイギリスを中心とする 近現代の植民地主義なので、尻拭いは 彼らがやるべきという国際世論は正論だと思います。ただ、成熟した老人国家の集合であるEUは、成熟はしていますが とにかく体力がない 。とても不安ですね 。戦闘は長期化する恐れがある。

自分たちと大きく価値観が異なる…キリスト教圏でもなく、典型的な民主主義国家圏でも、資本主義国家圏ですらない… 中東の国々に対して交渉を仕掛けるには、それはそれは大きな 体力が必要なんですけど、それがない。単発的に各国がネットワークを頼って交渉していますが、統一感がないと「戦後処理」に禍根を残します。つくづく、「ヤルタ会談」のような(とりあえずにでも)一本化できる、軸の数が少ない世界秩序は終わっているのだなと痛感させられます。

先ほどの中国の「経済至上主義」に絡めて言えば、あの当時のヨーロッパの植民地主義は、徹頭徹尾 「軍事至上主義」による諸外国の蹂躙でしたからね。むろん、その背後には経済利益がうごめていた訳ですけど。

EU各国にとっても、未だ果たせていない大きな宿題なのですよ、中東問題というのは。しかし、歴史の復習だけしてるわけにもいかないので、諸外国の緊密な連携が必要です。そして残念ながら そこには中国のプレゼンスは大きくなりはしないと分析家は指摘するのです。

(Photo by Jakob Rubner on Unsplash

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